「雰囲気」 作品の世界観として、穏やかに世界の終末を迎えつつある黄昏の世界、となっており、閉塞感と安息感の入り混じった複雑な雰囲気を持つ作品となっている。 黄昏の世界、というのは比喩ではなく、実際の画像として全体的に夕暮れっぽい色調が用いられていることもこだわりが感じられていい。 「調合」 レベルアップ、並びに施設への資金投資によって覚えられる各種スキルによって調合時の自由度が大きく増しており、手順や素材を組み合わせる楽しみが大きい。 凝ろうと思えばいくらでもそうできるし、ものが出来ればいいや、と、さらっと流すこともでき、多くのプレイヤーにとっては嬉しい仕様かな、と思う。 「アイテムユーズ」 歴代アトリエシリーズにおいて、アイテムとは自分で作って自分で使う(で、なくなる)というものだったけれども、今作の主人公は組織人、ということで、原型となるアイテムを1つだけ作ることに成功すれば、探索装備というカテゴリに登録するだけで何度使っても組織の側で補充してくれる上、アイテムを使えば使うほど「よく仕事をしました」とお金をたくさんくれるようになる。 賛否はあるかな、と思うけど、使いたいアイテムを使いたいように使える、というのは「錬金術師」を主人公とするゲームとしてはやっぱり嬉しいと思う。
「シナリオ」 もともとアトリエシリーズはシナリオで魅せる系統の作品でもない(と、個人的には思っている)けれども、今作は特にその傾向が強い。 主人公をエスカとロジーの二人に分けられており、しかも二人はほぼ常に行動を共にする、という作りになっているのに、イベント管理自体は別々で、いっつも一緒にいるはずなのに片方の主人公を攻略しただけではイマイチ話が繋がっていない。 これが「全く別々に行動する二人の主人公の視点から見る同じ事件」とかならワクワクしながら二人の主人公をクリアできると思うのだけど、基本、一緒に行動している二人なのでいまいち別視点の有り難みがない。 あと、最終目標と当面の目標になんの関係もない、というのもマイナス。 上司からの指示に従って仕事をするのだけれども、指示される内容が最終目標とほとんど関係のないものばかり。何年も何年も本筋と関係のないことを主目的として仕事をさせられて、最後の年になって「じゃ、最終目標クリアしてね」と言われる感じ。唐突というか、扱いが軽すぎる上に今まで大してシナリオに絡んでいない最終目標なので、「ああ、いつもと一緒のなんてこと無いイベントの一つなのね」と、淡々とクリアしてしまった。 また、主人公ごと別々にイベントを管理しているせいもあってか、一人一人、一つ一つのイベントの文章量や個数が極めて少ない。しかも調合・探索・戦闘などをこなす合間に、ほんの短いイベントがちょこっと入ってくるだけなので、せっかくの個別イベントも影が薄くなってしまうように感じた。 「キャラクター」 悪い、というわけではないのだけれども、上記のようにイベントの数や量が少なく、キャラクターの個性を伺わせる要素が少ないため、結果的にキャラクターに愛着を持つことができなかった。 主要キャラクターもそうだし、サブキャラクターもそう。アコギになりきれない少女商人、大人になりきれない少年監査官、はるか昔からの約束と後悔を持ち続けている自動人形などなど、魅力を期待させるキャラクターが多かったのに掘り下げや交流が少ないせいで心に残るものが少なかったのが非常に残念。 また、メインキャラのイベント進行について、「好感度」に相当するパラメータが隠しパラメータとして存在するようで、7人いるキャラのうち、控えに配置しているキャラのイベントが起きず、キャラエンドに到達できなくなる。 控えに配置していてもレベルは上がっていくし、シナリオにも絡んでくるし、装備の変更等も普通にできるので、あんまり控えを入れ替えよう、と思えないシステムにもかかわらず、隠しパラメータ的にイベントフラグを管理する、というのも底意地が悪い。 好感度があるならそれをはっきり見せてもいい(というか、過去作では普通にあったのだから削る意味がわからない)と思う。 「イベント管理」 今作の主人公はお役人であり、錬金術はお役所仕事のためのスキル。やれと言われたことをやる、というのが基本となるため、どこで何をするか、ということは基本的に上司に決められて通達を受ける。 そのため、何をいつどうするか、という条件は4ヶ月に一度、上司から言われないと何にもできない。 こういうイベント管理が悪いとは言わないけれど、プレイヤー側がスケジュール管理をそこそこにやると上司に言われた仕事は3ヶ月程度で全て完了してしまうため、1ヶ月ぐらい何にもやることがない暇な時間ができてしまい、プレイ中に小刻みな中だるみが入る。 人によるとは思うけれども、初回プレイでさえ一応の最終目的を達成し終わって後、300日くらいやることがなくなってしまうこともある、というのはさすがに「イベント管理が雑」と言われてもしかたがないのではないかな、と思う。(ちなみに全プレイ期間は4年間なので、ほとんど一年間は暇することになってしまう) 「戦闘」 いちいち極端。 序盤はPTメンバーの与えられるダメージが極めて小さく、アイテムも数を持てないし、サポートなどの演出がかなり長いため、戦闘にものすごく時間がかかる。 中盤は強いアイテムを3〜4個持っていけば会敵・殲滅を繰り返すだけの単純作業。 終盤は強い装備をもって殴る。もしくは強いアイテムで以下略、という単純作業。 でも特定のボスエネミーは「PTメンバーは終始HP半減状態、ボスは複数回行動かつ加速能力持ちでずっと俺のターン、しかも状態異常スキルと範囲攻撃持ち。倒すのに時間をかければ地形効果でプレイヤーキャラの能力は激減し、敵の能力は激増。頑張って数万あるHPを減らしていくと途中でHP超回復アンド自己能力超強化を使ってくる」という「ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたー」みたいなことをやってくる。 また、ボスは攻撃スキルも含めて結構こっちの攻撃を回避してくれるため、必中のアイテムを使えるアイテム使い(錬金術師)以外のメンバーの影が薄い。 ダメージインフレから複数回行動、全体超回復まで何でもできる主人公ペア以外ではある程度強い相手はほぼ倒せない=倒す方法がほぼ一つしかなく、錬金術師以外の仲間キャラの立場が弱すぎるというのは、複数のキャラがいるRPGとしてどうかと思う。 あと、主人公ペア以外の必殺技が弱い。追加ダメージ付与の武器をもたせた通常攻撃と殆ど変わらない。 調合や依頼をこなすことだけやってればよし。戦闘はオマケ。……というならともかく、ボスが居て倒さなければ目的を達成したことにならないのだから、戦闘バランスもきちんととって欲しかった。 「ワールドマップ」 ワールドマップに表示されるエリアの絶対数が少ないので、ちょっと物足りないかな、というところ。 エリアの内部には幾つもの小さい探索マップがあるけれど、普通のRPGで言えば、「ダンジョンの数が少ない代わりに、ダンジョンの中の部屋数がそこそこある」というような感じ。 やっぱりダンジョン自体の数が多い方が、世界を歩き回る感じがして嬉しいと思う。
結構息の長いシリーズである、アトリエシリーズ最新作。 アトリエシリーズは「家族を探す」「国を栄えさせる」「錬金術で身を立てる」など、最初から主人公にある程度しっかりした決意や大方針がないとイマイチ面白みがないんだな、と気づかせてくれた作品だった。 主人公の目的の無さがストーリーの起伏の無さにつながり、ストーリーの平坦さがゲーム全体のテンポを落とす、というか。 あと、主人公はエスカ一人にして、ロジーは非操作の仲間キャラとしたほうが良かったかな、と思う。 まあ、とはいえ、シリーズファンなら問題なくおすすめ。 スケジュール管理とかが苦にならず、ちまちまとものを作る作業などが嫌いじゃない人にもそれなりにおすすめ。 前作の登場キャラとかも若干出てくるけれども、別に知らなくてもプレイに支障はないくらいなので、今作からでもOK。 アトリエシリーズ初めての人は、導入としてはあまり適していないかもしれない。どちらかと言えば前作、アーシャのアトリエの方が初めてやるには向いているかなと思うので、興味はあるけどやったことない人は、もし良ければそちらからどうぞ。
GOOD!
「雰囲気」
作品の世界観として、穏やかに世界の終末を迎えつつある黄昏の世界、となっており、閉塞感と安息感の入り混じった複雑な雰囲気を持つ作品となっている。
黄昏の世界、というのは比喩ではなく、実際の画像として全体的に夕暮れっぽい色調が用いられていることもこだわりが感じられていい。
「調合」
レベルアップ、並びに施設への資金投資によって覚えられる各種スキルによって調合時の自由度が大きく増しており、手順や素材を組み合わせる楽しみが大きい。
凝ろうと思えばいくらでもそうできるし、ものが出来ればいいや、と、さらっと流すこともでき、多くのプレイヤーにとっては嬉しい仕様かな、と思う。
「アイテムユーズ」
歴代アトリエシリーズにおいて、アイテムとは自分で作って自分で使う(で、なくなる)というものだったけれども、今作の主人公は組織人、ということで、原型となるアイテムを1つだけ作ることに成功すれば、探索装備というカテゴリに登録するだけで何度使っても組織の側で補充してくれる上、アイテムを使えば使うほど「よく仕事をしました」とお金をたくさんくれるようになる。
賛否はあるかな、と思うけど、使いたいアイテムを使いたいように使える、というのは「錬金術師」を主人公とするゲームとしてはやっぱり嬉しいと思う。
BAD/REQUEST
「シナリオ」
もともとアトリエシリーズはシナリオで魅せる系統の作品でもない(と、個人的には思っている)けれども、今作は特にその傾向が強い。
主人公をエスカとロジーの二人に分けられており、しかも二人はほぼ常に行動を共にする、という作りになっているのに、イベント管理自体は別々で、いっつも一緒にいるはずなのに片方の主人公を攻略しただけではイマイチ話が繋がっていない。
これが「全く別々に行動する二人の主人公の視点から見る同じ事件」とかならワクワクしながら二人の主人公をクリアできると思うのだけど、基本、一緒に行動している二人なのでいまいち別視点の有り難みがない。
あと、最終目標と当面の目標になんの関係もない、というのもマイナス。
上司からの指示に従って仕事をするのだけれども、指示される内容が最終目標とほとんど関係のないものばかり。何年も何年も本筋と関係のないことを主目的として仕事をさせられて、最後の年になって「じゃ、最終目標クリアしてね」と言われる感じ。唐突というか、扱いが軽すぎる上に今まで大してシナリオに絡んでいない最終目標なので、「ああ、いつもと一緒のなんてこと無いイベントの一つなのね」と、淡々とクリアしてしまった。
また、主人公ごと別々にイベントを管理しているせいもあってか、一人一人、一つ一つのイベントの文章量や個数が極めて少ない。しかも調合・探索・戦闘などをこなす合間に、ほんの短いイベントがちょこっと入ってくるだけなので、せっかくの個別イベントも影が薄くなってしまうように感じた。
「キャラクター」
悪い、というわけではないのだけれども、上記のようにイベントの数や量が少なく、キャラクターの個性を伺わせる要素が少ないため、結果的にキャラクターに愛着を持つことができなかった。
主要キャラクターもそうだし、サブキャラクターもそう。アコギになりきれない少女商人、大人になりきれない少年監査官、はるか昔からの約束と後悔を持ち続けている自動人形などなど、魅力を期待させるキャラクターが多かったのに掘り下げや交流が少ないせいで心に残るものが少なかったのが非常に残念。
また、メインキャラのイベント進行について、「好感度」に相当するパラメータが隠しパラメータとして存在するようで、7人いるキャラのうち、控えに配置しているキャラのイベントが起きず、キャラエンドに到達できなくなる。
控えに配置していてもレベルは上がっていくし、シナリオにも絡んでくるし、装備の変更等も普通にできるので、あんまり控えを入れ替えよう、と思えないシステムにもかかわらず、隠しパラメータ的にイベントフラグを管理する、というのも底意地が悪い。
好感度があるならそれをはっきり見せてもいい(というか、過去作では普通にあったのだから削る意味がわからない)と思う。
「イベント管理」
今作の主人公はお役人であり、錬金術はお役所仕事のためのスキル。やれと言われたことをやる、というのが基本となるため、どこで何をするか、ということは基本的に上司に決められて通達を受ける。
そのため、何をいつどうするか、という条件は4ヶ月に一度、上司から言われないと何にもできない。
こういうイベント管理が悪いとは言わないけれど、プレイヤー側がスケジュール管理をそこそこにやると上司に言われた仕事は3ヶ月程度で全て完了してしまうため、1ヶ月ぐらい何にもやることがない暇な時間ができてしまい、プレイ中に小刻みな中だるみが入る。
人によるとは思うけれども、初回プレイでさえ一応の最終目的を達成し終わって後、300日くらいやることがなくなってしまうこともある、というのはさすがに「イベント管理が雑」と言われてもしかたがないのではないかな、と思う。(ちなみに全プレイ期間は4年間なので、ほとんど一年間は暇することになってしまう)
「戦闘」
いちいち極端。
序盤はPTメンバーの与えられるダメージが極めて小さく、アイテムも数を持てないし、サポートなどの演出がかなり長いため、戦闘にものすごく時間がかかる。
中盤は強いアイテムを3〜4個持っていけば会敵・殲滅を繰り返すだけの単純作業。
終盤は強い装備をもって殴る。もしくは強いアイテムで以下略、という単純作業。
でも特定のボスエネミーは「PTメンバーは終始HP半減状態、ボスは複数回行動かつ加速能力持ちでずっと俺のターン、しかも状態異常スキルと範囲攻撃持ち。倒すのに時間をかければ地形効果でプレイヤーキャラの能力は激減し、敵の能力は激増。頑張って数万あるHPを減らしていくと途中でHP超回復アンド自己能力超強化を使ってくる」という「ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたー」みたいなことをやってくる。
また、ボスは攻撃スキルも含めて結構こっちの攻撃を回避してくれるため、必中のアイテムを使えるアイテム使い(錬金術師)以外のメンバーの影が薄い。
ダメージインフレから複数回行動、全体超回復まで何でもできる主人公ペア以外ではある程度強い相手はほぼ倒せない=倒す方法がほぼ一つしかなく、錬金術師以外の仲間キャラの立場が弱すぎるというのは、複数のキャラがいるRPGとしてどうかと思う。
あと、主人公ペア以外の必殺技が弱い。追加ダメージ付与の武器をもたせた通常攻撃と殆ど変わらない。
調合や依頼をこなすことだけやってればよし。戦闘はオマケ。……というならともかく、ボスが居て倒さなければ目的を達成したことにならないのだから、戦闘バランスもきちんととって欲しかった。
「ワールドマップ」
ワールドマップに表示されるエリアの絶対数が少ないので、ちょっと物足りないかな、というところ。
エリアの内部には幾つもの小さい探索マップがあるけれど、普通のRPGで言えば、「ダンジョンの数が少ない代わりに、ダンジョンの中の部屋数がそこそこある」というような感じ。
やっぱりダンジョン自体の数が多い方が、世界を歩き回る感じがして嬉しいと思う。
COMMENT
結構息の長いシリーズである、アトリエシリーズ最新作。
アトリエシリーズは「家族を探す」「国を栄えさせる」「錬金術で身を立てる」など、最初から主人公にある程度しっかりした決意や大方針がないとイマイチ面白みがないんだな、と気づかせてくれた作品だった。
主人公の目的の無さがストーリーの起伏の無さにつながり、ストーリーの平坦さがゲーム全体のテンポを落とす、というか。
あと、主人公はエスカ一人にして、ロジーは非操作の仲間キャラとしたほうが良かったかな、と思う。
まあ、とはいえ、シリーズファンなら問題なくおすすめ。
スケジュール管理とかが苦にならず、ちまちまとものを作る作業などが嫌いじゃない人にもそれなりにおすすめ。
前作の登場キャラとかも若干出てくるけれども、別に知らなくてもプレイに支障はないくらいなので、今作からでもOK。
アトリエシリーズ初めての人は、導入としてはあまり適していないかもしれない。どちらかと言えば前作、アーシャのアトリエの方が初めてやるには向いているかなと思うので、興味はあるけどやったことない人は、もし良ければそちらからどうぞ。