・シナリオ 単刀直入に「プレイしてよかった」と思える作品だった。 他人の心の声が聴こえてしまうという特異体質に悩まされている主人公が、想いを寄せていたクラスメイト“雪本さくら”の不可解な転落死の謎を解くために、それまでは避けていた人の心に触れながら真相に迫っていく……というのがメインストーリー。 これとは別に様々な事件に巻き込まれ謎を解いていく章ごとに分かれた推理ドラマがあり、どちらも同じ『謎解き』ではあるものの、前者は人間ドラマに、後者はミステリーに重点を置いていて、それぞれが交互にやってくるのでテンポが非常に良いと感じた。 途中まではただ絡み合うだけだったメイン(雪本さくらの謎)とサブ(推理ドラマパート)の線が、最終的に一つの真実に収束する展開は見事としか言い様がなく、思わず感嘆を覚えるほどだった。 ・推理ゲーム要素 ボイチェンのようなフィルターが掛かっているとはいえ、心の声が聴こえるという能力もあり、割りと早い段階で犯人が絞れてしまう。 そういった状況でギミックを解いたりロジックを組み立てる様は、どこか『古畑任三郎』にも似ていて、真実を突きつけるシーンはなかなか爽快だった。 謎解きやミステリーが苦手な自分でも詰まることなくクリアできたので、難易度は比較的イージーな方だろう。 ・キャラクター メインキャラも章毎に登場するゲストキャラも皆魅力に溢れている。 表紙の5人は単にギャルゲーのヒロインとしてだけでなく、ストーリーの中でそれぞれ重要な役割を担っていて、誰一人として添え物にはなっていない。 私のお気に入りは黒月沙彩(表紙左下)。 「ロリの不思議ちゃん」という本来なら歯牙にもかけない属性のキャラだが、実はお姉さんな一面もあってそのギャップにやられてしまった。ネタバレになるので詳しくは書けないが、後半はある意味「助手」のような存在になり、機転を利かせ主人公と立ち回ることが多くなるため、絆が深まっていくのを一番実感できるキャラでもあった。
・~章以降の急展開 ある章から物語の雰囲気がガラリと変わる。 すし屋に入ったらカレーが出てきた、あるいは総合格闘技を観ていたらドラゴンボールのようなバトルがはじまった、というような急展開に思わず首をひねった人も多いのではないだろうか。 私もその一人で、正直ここでプレイをやめようか悩んだが、黒月沙彩がピンチになる章でもあったため、何とか切り抜けることができた。 しかし、最終的にここで感じた違和感は、クリア後にはすべて拭い去ることになる。 この急展開はメインとサブが一つの線に収束する序章であり、物語のギミックとして必然であったと理解することができるからだ。 ただ、初見プレイ中は困惑するシーケンスであったため、BADの方に書かせてもらうことにした。 ・主人公と雪本さくら 主人公の思考や言動に統一感がなく、シナリオの都合で無理やり動かされていると感じることが多々あり、正直あまり感情移入はできなかった。 また、雪本さくらはこの作品において桃園萌花と双璧をなすヒロインであり、彼女の死をめぐる謎はプレイヤーをラストまで引っ張るフックとして機能はしているものの、早々に退場してしまうためさくらをずっと見てきた主人公と、やり取りがたったの数回だった私とでは、雪本さくらに対して終始齟齬が生じている感が否めなかった。
・総評 比較的泣き上戸の私がクライマックスのとある演出で目頭が熱くなることはあっても、涙を流すまでに至らなかったことを考慮すると、大味で粗も目立つ作品だったのだと思う。 それでも、冒頭で述べた通り「プレイしてよかった」と思えたゲームなのは間違いない。 体験版が購入の決め手となったので、悩んでいる方がいれば是非プレイしてみてほしい。 全体の3分の1にあたる2章までプレイすることができる。
GOOD!
・シナリオ
単刀直入に「プレイしてよかった」と思える作品だった。
他人の心の声が聴こえてしまうという特異体質に悩まされている主人公が、想いを寄せていたクラスメイト“雪本さくら”の不可解な転落死の謎を解くために、それまでは避けていた人の心に触れながら真相に迫っていく……というのがメインストーリー。
これとは別に様々な事件に巻き込まれ謎を解いていく章ごとに分かれた推理ドラマがあり、どちらも同じ『謎解き』ではあるものの、前者は人間ドラマに、後者はミステリーに重点を置いていて、それぞれが交互にやってくるのでテンポが非常に良いと感じた。
途中まではただ絡み合うだけだったメイン(雪本さくらの謎)とサブ(推理ドラマパート)の線が、最終的に一つの真実に収束する展開は見事としか言い様がなく、思わず感嘆を覚えるほどだった。
・推理ゲーム要素
ボイチェンのようなフィルターが掛かっているとはいえ、心の声が聴こえるという能力もあり、割りと早い段階で犯人が絞れてしまう。
そういった状況でギミックを解いたりロジックを組み立てる様は、どこか『古畑任三郎』にも似ていて、真実を突きつけるシーンはなかなか爽快だった。
謎解きやミステリーが苦手な自分でも詰まることなくクリアできたので、難易度は比較的イージーな方だろう。
・キャラクター
メインキャラも章毎に登場するゲストキャラも皆魅力に溢れている。
表紙の5人は単にギャルゲーのヒロインとしてだけでなく、ストーリーの中でそれぞれ重要な役割を担っていて、誰一人として添え物にはなっていない。
私のお気に入りは黒月沙彩(表紙左下)。
「ロリの不思議ちゃん」という本来なら歯牙にもかけない属性のキャラだが、実はお姉さんな一面もあってそのギャップにやられてしまった。ネタバレになるので詳しくは書けないが、後半はある意味「助手」のような存在になり、機転を利かせ主人公と立ち回ることが多くなるため、絆が深まっていくのを一番実感できるキャラでもあった。
BAD/REQUEST
・~章以降の急展開
ある章から物語の雰囲気がガラリと変わる。
すし屋に入ったらカレーが出てきた、あるいは総合格闘技を観ていたらドラゴンボールのようなバトルがはじまった、というような急展開に思わず首をひねった人も多いのではないだろうか。
私もその一人で、正直ここでプレイをやめようか悩んだが、黒月沙彩がピンチになる章でもあったため、何とか切り抜けることができた。
しかし、最終的にここで感じた違和感は、クリア後にはすべて拭い去ることになる。
この急展開はメインとサブが一つの線に収束する序章であり、物語のギミックとして必然であったと理解することができるからだ。
ただ、初見プレイ中は困惑するシーケンスであったため、BADの方に書かせてもらうことにした。
・主人公と雪本さくら
主人公の思考や言動に統一感がなく、シナリオの都合で無理やり動かされていると感じることが多々あり、正直あまり感情移入はできなかった。
また、雪本さくらはこの作品において桃園萌花と双璧をなすヒロインであり、彼女の死をめぐる謎はプレイヤーをラストまで引っ張るフックとして機能はしているものの、早々に退場してしまうためさくらをずっと見てきた主人公と、やり取りがたったの数回だった私とでは、雪本さくらに対して終始齟齬が生じている感が否めなかった。
COMMENT
・総評
比較的泣き上戸の私がクライマックスのとある演出で目頭が熱くなることはあっても、涙を流すまでに至らなかったことを考慮すると、大味で粗も目立つ作品だったのだと思う。
それでも、冒頭で述べた通り「プレイしてよかった」と思えたゲームなのは間違いない。
体験版が購入の決め手となったので、悩んでいる方がいれば是非プレイしてみてほしい。
全体の3分の1にあたる2章までプレイすることができる。