キャラクターデザインはかわいいし、立ち絵のバリエーションが豊富で、少ししか出てこないサブキャラもきちんとデザインされているのが好印象です。
音楽はストーリーの肝心な場面をよく盛り上げているので高評価です。声優は半分くらいしか有名な方ではありませんが、個人的に非常に良かったです。
ヒロインの数が多く、ボリュームはあると思うので熱中度は４としましたが、ほとんどのエンディングはあっさりしすぎている印象があったので、満足度は普通くらいにしました。
選択肢や一日ごとにボタン１つであっという間にスキップできるし、立ち絵の変化が多いのに切り替えが速いのでサクサク進められます。なにより、過去ログとフローチャート表示の機能で、相当過去のテキストでもすぐに読み返せるのが最高です。もちろんセーブ・ロードの操作に手間取るなんてことはありえません。よって快適さは満点です。
ストーリーには、特にこれといった光るものはないのですが、心理描写や演出が丁寧なのは評価できます。特に、ＰＣ版から移植されるにあたって追加されたヒロインのストーリーが良いです。この手のゲームは、追加ヒロインのシナリオは取って付けたようなカンジになりがちなのですが、他のヒロインとの絡みもしっかり取り入れた丁寧なつくりで好印象です。どのヒロインのストーリーも王道で、感動して涙を流すようなものはないですし、それどころか凡庸で退屈な展開もあります。しかし、それぞれのヒロインのパーソナリティーはきちんと確立されているし、主人公の家族を大切にする思いや自分の進路について真面目に悩む姿勢は好印象です。登場人物の魅力が物語をしっかり引き立たせていると感じるので、ストーリーは４点にしたいと思います。

この作品のＰＣオリジナル版のメーカーは、過去の２作品も家庭用に移植されています。前２作が気に入っているなら、本作も十分気に入ることでしょう。
個人的には新しく攻略対象になった同級生キャラがとても気に入りました。学院での会話も楽しいし、特に砂浜でのシーンがツボにはまりました。ヒロインに魅力があるので、途中の中だるみや、最後のご都合主義的展開も許せます。
家庭用の恋愛ＡＶＧとしての完成度は非常に高く、初心者にオススメです。また、主人公とヒロインが両思いなのが明らかなのに、なかなか進展せずにやきもきする王道的展開が好みな人はさらにオススメです。

【グラフィック】
透明感があり全体的にとても綺麗。エフェクトも多く、しかも処理が重くないので非常に好感が持てます。背景グラフィックはなぜか全体的に神秘的な印象を受けるものが多く、遠近感もうまく表現されていて作品の雰囲気に合っていると思います。

【音楽】
これも透明感があるというか、全体的にシーンによく馴染みます。欲を言えばもう一つ一度聞いたら忘れないような印象的な曲が欲しかったところ。

【システム】
PS2への移植の際にすごく細かな所でがんばっている製作者サイドの熱意が伝わってきます。日付が変わるごとに行われるオートセーブはゲームの進行と並行して行われ、セーブ中にゲームが止まったりすることはありません。メッセージ・及びセリフの最中にバックログを呼び出しても、バックログを閉じるとメッセージは中断された位置から表示され、またボイスの再生も中断された位置から再開されます。セーブ・ロードについては特殊なシステムを取っており、メモリセーブ・メモリロード(他ゲームでいうクイックセーブ・ロード)のみが存在し、メモリーカードへのセーブ時にこれらメモリセーブのデータを保存して再開時にロードできるようにするという斬新なもの。セーブ時間にストレスを感じることがほぼありません。
その他超高速スキップやシーンスキップなど、快適さを追求した上で更に新しいものも取り入れている現時点で最高峰のシステムだと思います。KIDとはまた違った方向性で完成度の高いシステムです。

そのままでも普通に良作かと思いますが、システムの驚くべき快適さがさらにそれに拍車をかけてます。ロード時間とかも殆ど気にならず、純粋に作品本来の味を楽しめます。
後はもう少しストーリーにこれといった何かが欲しかった所です。