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GOOD!

アンチャーテッドは限られた空間内から覗ける自然かつ幻想的な風景を作り出し、CRYSISは汚さを含めた究極の写実的空間を目指した。そしてこのレッド・デッド・リデンプションは芸術的かつリアルな、広大な自然フィールドを実現している。山にかかる夕日、太陽が照りつける荒野、夜の村、そのすべてが西部劇映画のワンカットのようである。

よくGTAを代表とするクライムアクションゲームの感想で「ドライブするだけで楽しい」というものがある。しかし自分にはその楽しさがわからなかった。オープンワールド系のゲームは好きだが、その広大なフィールド上で行うアクションが楽しいのであって、ゲームの主軸から外れたドライブなんて面白くさせる要素はまったく無いし、楽しみ方を間違っていると思っていた。しかしこのレッド・デッド・リデンプションで意味もなくフィールドを動きまわることの楽しさをようやく知ることができた。前述した広大な自然の美しさもそうだが、それだけではない。まずはなんといっても馬。馬に乗ることがここまで楽しいゲームは今まであっただろうか。この野性味あふれる躍動的な走りに魅せられた後では、無双やoblivionのような機械的な動きをする馬では満足できないだろう。そしてフィールドを色付ける様々な副次的要素。野生動物の狩りや植物の採集、あちこちで発生するいくつもの小規模なイベント。広大なフィールドを持つゲームはそのうちファストトラベルだのタクシーだの一瞬で移動できるシステムを利用しがちになり、このゲームにもそれに近いものがいくつか存在するが、余程のことがないかぎり利用する気にはなれない。無駄な移動こそがこのゲームの魅力の一つなのである。

寄り道要素ばかり触れたが、メインストーリーの出来も充分すぎるほどである。このゲームは非常にキャラクターが濃い。顔も濃い。メインキャラクターからサブミッションの脇役に至るまで、この荒れ果てた無法地帯で生まれたキャラクター達は、誰もが信念を持って自分なりに行動している。生きるだけでも大変なのにまるで人生を謳歌しているようにも見える。自分がもしこの世界に放り込まれたら3分でゴロツキに身ぐるみ剥がされるか殺されるのに、行ってみたいと思ってしまう。

ストーリーやキャラクターのセリフは非常にセンスが高いが、それを支えているのは日本語翻訳のレベルの高さである。日本語で脚本を書いたのではないか？と疑ってしまうほどの完成度の高さであり、この世界をしっかりと表現している。

このゲームの花形である銃撃戦もよくできている。簡単な操作で西部劇さながらのガンマンを演じることができる。だからといってゲームが簡単なわけではなく、的確な位置取りとカバーアクション、素早い攻撃対象の選択が必要となる。しかし逆に言えばこれだけでよく、射撃自体はオートエイムが7割ぐらいなんとかしてくれる（残り3割は照準を微妙にずらしたヘッドショットと偏差射撃）。このゲームの銃撃戦は射撃までの動きが非常に楽しく、射撃部分は簡略化されていても問題無し、むしろオートエイムが無ければストレスが募るだけだっただろう。また、デッドアイというシステムを使えば、一瞬で大勢の敵を撃ちぬくことができ、これもまた格好良い。ただ敵の命を奪うだけでなく、例えば町で女性を襲っている暴漢に銃を向け、相手が銃を抜いた所でデッドアイで敵の銃を撃ち落として降参させるとか、逃げる敵の足を撃ちぬいて縄で縛るなどといった、西部劇ではありがちながらゲームとしては難易度の高い射撃もらくらくとこなす事ができる。登場する銃も、現代や第二次大戦には無い良さを持っている。

マルチプレイの放浪モードは、ようやくこれを作ってくれたという感じ。シングルプレイ時そのままの広大なマップを、移動制限無しで他のプレイヤーと楽しめるのだ。色々と制約はあるもののこれができれば十分である。

BAD/REQUEST

このゲームの馬というのは単なる移動手段である。GTAの車以下の扱い。種類による差異も少ないし、一頭しか保存することができない。成長やカスタマイズ要素もまったくなく、ミッションの進行や不慮の事故で突然いなくなる。共に戦っていく愛馬は生きているだけに他ゲームの愛車などとは比べ物にならないほど愛着がわくものである。もっと扱いを良くしてほしかった。また、馬は店で買うだけでなく野生の馬を捕らえて自分の馬にすることもできるのだが、捕らえられるようになる序盤のミッションで、最強の一角とされる馬が強制的に手に入る。これと同ランクの馬となるとゲーム後半しか手に入らないので、馬の乗り換えや種類差はまったく機能していない。

BGMはなんというか中途半端である。メキシコに初めて渡った時のボーカル付きの音楽は非常に興奮したが、それだけ。もっとコテコテのウエスタンミュージックを用意して、BGMを前面に押し出してもよかったのではないか。一応PS3版でもカスタムサントラの再生機能が用意されてあり、有り難いことなのだが、カスタムサントラはゲーム中の出来事や雰囲気に合わせず再生されるのでやはりゲーム内のオリジナル音源には敵わない。

狩りはこのゲームの素晴らしい要素の一つ。ただ、それによって得られるのは使い道のないお金か代用品が十分ある回復アイテムである。もう少しリターンを豊富にしてくれれば狩り自体の楽しさもさらに向上したと思う。あと動物を剥ぎ取るシーンも無くてはならない存在だが、スキップ可能にして欲しかった。

主人公の性格に関しては非常に評価が難しい。主人公のジョン・マーストンはどう足掻いても善人であり、アウトローと言うより法の番人と言ったほうがしっくりくる。一応、名誉という数値があり、殺人などの悪行を繰り返すと名誉が下がりステータス上では悪人となる。だがカットシーンや会話ではどうしても主人公は善玉に映るし、こんな主人公が悪行を行うのは全く似合わないししたくない。結果自由なゲームプレイを阻害されている。しかし仮にそのような主人公ではなくても、どのみち誰もが正義を貫いたプレイをしていたと思う。西部劇の主人公にはやはり正義が似合うし、人に何かと助けを請われるゲームシステム上、弱者たちを助けていかないと楽しくない。この辺を調整してどちらにも転べるようなゲームシステムにして内容を薄めるよりは、このように正義に特化したほうがよかったかもしれない。

ボリュームはあるように見えるが、実際には物足りなさを感じてしまう。実際にボリューム不足なのか、ゲーム内容がそうさせるのかは不明だがもうすこしメインミッションなり増やして欲しかった。

フリーズは全く発生しないが、バグが多い。ミッションの進行がおかしくなってクリア不可能となったり、人や物が空中に浮いていたりする。害はないものが多いが、せっかくの仮想空間をぶち壊しにされるのはいただけない。

マルチプレイもまだまだ改良の余地があると思う。対戦はオートエイムがあるので今ひとつ盛り上がらないし、ゲームルールも特に目新しいものは無い。良いところにあげた放浪モードも、所詮対戦モードの待合ロビーであり、やることが余り無い。出会い頭に撃ち殺してくるプレイヤーばかりだし、もうすぐ配信が予定されているCOOPモードDLCに期待したい。

COMMENT

ここまで素晴らしいゲームに出会えたのは久しぶりだった。英語版の購入も考えていたが、日本語版が出るまで待って本当に良かった。翻訳は素晴らしいし、ビジネスを考えてレーティングを軽めにして規制を増やすといった、スクウェアエニックスのような愚行を行わないで済んだことは非常に有り難く、それを指示したロックスターに感謝したい。箱庭ゲームを作らせれば、ロックスター（サンディエゴ）の右に出るメーカーはいない。今年度のゲーム・オブ・ザ・イヤーはこのタイトルが総ナメすることになるだろう。