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GOOD!

以下、DLC無しの本編のみのレビューです。
「Fallout3:Game of the Year Edition」をプレイ済みです。

○オリジナリティー
本作は「Fallout 3」の派生作です。
基本的なシステムや世界観は「3」と同様で、
その点ではオリジナリティーは高くありません。
しかし「3」をベースにしつつも多くの新要素または要素の改善が
行われており、特に以下の部分はオリジナリティーとして評価できます。
・勢力システム
　いくつかの勢力とプレイヤーとの間に好悪の関係があり、良好な関係の
　勢力ではいい待遇を得られ、敵対している場合は即戦闘状態になったり
　します。核戦争後の荒野の中でも徐々に再社会化してきている本作世界
　を表現するために、大きな役割を果たしているシステムです。どの勢力
　も完全な正義や悪ではなく、加担した勢力によって大きくストーリーの
　展開が変わるのも○。エンディングも多彩になりました。
・アイテム関係
　いくつかの雑アイテムを組み合わせ、銃弾や回復アイテム等が製作できる
　ようになりました。また、武器や銃弾についてのパラメータも追加され、
　装甲の厚い敵のための徹甲弾等、銃弾の種類が増加し、また武装に強化
　アイテムを装着できるようになりました。出来についてはBAD欄で述べる
　ことになりますが、前作と比較しオリジナリティーある要素としては評価
　できます。
・ハードコアモード
　喉の渇き、飢え、眠気のパラメータが追加され、他にもリアル寄りの
　調整がなされた高難易度モードです。水や食糧が貴重な、サバイバルな
　世界を味わいたい上級者向けですが、Falloutの世界はこちらの方が
　より正確に表現できていると思います。

○その他の改善点等
オリジナル部分以外にも、以下のような改善点があり、評価できます。
・武装の調整
　近接戦闘武器が強化され、十分メインとして使っていけるようになりました。
　また、重火器と軽火器がスキル上では統合され、使いやすくなっています。
・仲間関係
　いっしょに旅をする仲間について、さまざまな指示を出せるシステムが
　追加され、特に戦闘について細かく調整できるようになりました。
・非戦闘スキルによる会話選択肢
　本作は前作に引き続き、ポイント配分制のスキルシステムを採用していますが、
　スピーチや科学、修理のスキルが高いと、会話等で有利に展開できる
　選択肢が大幅に追加されました。上記の勢力システムと関連して、
　腕っ節だけでなく口先と技術で渡っていくこともできる、人間関係を重視した
　世界の表現として、良いシステムだと思います。

○グラフィック
こちらも前作を多くの面で承継していますが、
オープンワールドゲームとして水準以上であることはもちろん、
本作の荒涼とした砂漠やきらびやかなカジノ等々、世界の表現が十分以上に
できており、センスのあるグラフィックだと感じました。

○その他
高い自由度、世界観、スキルや特殊能力、戦闘のシステム等、「3」の良い点を
受け継いでいます。「3」はここが良かったのに……という改悪点は大きな部分では
ほとんど無かったと思います。
ローカライズは全編吹き替え、声優起用という厚遇です。翻訳はおおむね良好
ですが、誤訳や訳漏れも見られます。しかしこの規模の作品のローカライズと
しては及第点以上と言ってよいでしょう。

BAD/REQUEST

○フリーズ
前作からおなじみのフリーズも残念ながらパワーアップしているように
思えました。メインクエストクリアまで10回ほど経験しました。「3（GOTY）」
でもメイン終了まではそれほど気にならなかったのですが……。
主に戦闘中と、移動でのロードで発生し、対処はPS3の電源オフのみです。
「快適さ」について大きく減点なのはもちろん、いちいち中断させられる
ことで「熱中度」もダウンです。今の時間をわざわざ思い出させてくれる
作りですね。
関連して、フィールド移動中にやたらカクつくようになりました。
重い時だけでなく、敵も何もいない荒野でも、少し走ると定期的に、処理
落ちのように一秒前後ガクガクします。致命的ではありませんが、気になる
部分です。
なお、当然のようにバグもありますが、前作よりはマシな量と悪質さだと
思います。

○ロード時間
起動前とマップ移動にロードが入ります。起動前はしょうがないにしても、
移動のロードはもう少し短いと有難かったです。4、5秒のロードが建物に
入ったり出たりするたびに起こるので、移動がおっくうになってしまいました。

○新要素について
・アイテム関連
　GOODで述べたアイテム製作ですが、必要とされるアイテムを覚えるのが
　大変です。材料にも重量があるので片っ端から拾うわけにもいきません。
　覚えて拾うのが面倒で、メインクリアまで一つもアイテムを作った覚えが
　ありません。せめて材料には重さが無ければ……。
・銃弾、武器強化
　徹甲弾等の銃弾は種類は多くなりましたが、作るのが面倒なこともあり使う
　ことすらありませんでした。武器の強化にしても、武器ごとの選択肢は少なく、
　強化の自由度は高くありません。
・ハードコアモード
　序盤だけやりましたが、思ったほど水、食糧、睡眠関係は辛くありません。
　食糧も水もそのへんでけっこう売っており、武器を修理して売るとかなりの
　値段で売れるので、さほど辛い設定になっていないような気がします。
　ただ、戦闘関係の制限は、かなりハードなバランスになっています。

○その他不満点
・スキル関係
　上で述べた非戦闘スキルの重要性アップですが、逆に言うならこれらに
　だいぶ振らないと、話を進める上で大きな制約がかかってしまいます。
　楽に進めたいなら、スキルポイント配分の自由度が低くなるのもしょうがない、
　というのもわかる話ではあるのですが。
・ストーリー
　正直言って、本作における二大勢力「新カリフォルニア共和国（NCR）」や
　「シーザー・リージョン」は、Fallout世界にはあまり馴染んでいないように
　思えてしまいました。主にそれらの勢力が中心となって進むストーリーのため、
　クリアしても前作ほどの満足感はありませんでした。もう一つの重要勢力の
　あるニューベガスも、入ってみると割としょぼくて見た目が残念な感じ。
・マップ
　立体地形に未対応の平面マップ。科学技術に関しては、1970年代〜80年代
　の「レトロな未来予想図」がそのまま現れたようなFallout世界は魅力的ですが、
　ここはいい加減、現実的になんとかしてもらいたいところです。

COMMENT

「3」に引き続き、とても楽しめた作品でした。
前作のよい部分はおおむね引き続きつつ、追加要素と新たなストーリー・
マップを載せた作品と言ってよいと思います。
全体的には、「3」をベースにした超巨大MODまたはDLCという感じの作品です。
基本の部分は「3」とほぼ同じなので、前作経験者の方ならすぐに馴染める
でしょうし、ここが変わった！という体験も経験者ならではだと思うので、
前作プレイを推奨します。

ただし前作よりもフリーズやロードの不快さが目立ったのも事実です。
フリーズする作品なんて欠陥品だ！という方や、こまめにセーブするのが
面倒な方は買ってはいけません。オートセーブはありますが、フリーズして
再起動したらオートセーブのデータが消えていたことが一度あったので（笑）

ストーリーに関しては、前作の「ブラザーフッド・オブ・スティール（B.O.S.）」
や「エンクレイヴ」の連中は脇役となり、上で挙げた二大勢力と、ニューベガスの
支配勢力がメインとなって進んでいきます。現代（21世紀）の強権的なアメリカの
復活を彷彿とさせる「NCR」や部族連合の「リージョン」の戦いというと、アメリカ
開拓時代をオマージュしたのか？と思いますが、「リージョン」はネイティブ・
アメリカン部族とは似ても似つかない、古代ローマ帝国軍の格好をして奴隷制を敷いて
いる連中です。ストーリーを進めるにつれ、ニューベガス勢力も含め、「こいつらに
味方して本当にいいのか？　もっとマシな奴らいないの？」と思わせられる展開は、
よく考えられていると思います。ただ、BADでも述べましたが、どうもNCRもリージョンも
Falloutの世界観から「浮いている」感じが自分はしました。

あと、前作から引き続き、SFホラーな末路を遂げた各Vault探索の楽しみは健在
です。個人的には、前作からそうですが、Vault探索がやってていちばん楽しいです
（笑）

全体として、定価で買っても損はしない作品だと思います……ただし、フリーズを
我慢できる人限定で。廉価版そろそろ出ないかな、と思いつつ買ってしまいましたが
後悔はしていません。フリーズ問題を除けばBAD部分はおおむね些細なことと言える
ので、傑作「3」の派生作品の肩書きを堂々と名乗れる名作だと思います。
それを思うにつけ、つくづくフリーズを（できればロードも）なんとかできなかった
ものかとも思ってしまいますが、そこはここの点数で正しく評価されていると思うので、
よしとします。残念な部分もありますが、面白かった作品でした。